SRID  Journal




SRIDジャーナルとは


「SRIDジャーナル」は、国際開発のあり方、進め方について、斬新で面白く、知的で革新的な考えとアイディアをブログのような形で、世界に向けて発信していこうとするものです。学術論文集を目指したものではなく、SRID会員と友人達のアイディアを広く提供することが一番大きな目的です。内容は論説、提言、書評、エッセイ、フォーラム、等々何でもありです。日本と世界の識者の間で共有していただければ望外の喜びです。この趣旨に共感される読者からの投稿も歓迎いたします。年に2回という限られた発行ではありますが、人々の心に共感と明日への希望を与えられるように、努力して行きたいと思います。


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途上国アルバム(鈴木博明:ベオグラードのエトランジェ)

連邦議会議事堂と政治スローガン 軍事博物館があるカレメグダン城址公園 裏通りのセルバア正教の教会

巻頭エッセイ

脆弱性文化の打破:グローバル・イシューへの新たなアプローチ

高橋一生

アレキサンドリア図書館顧問


1.国際開発の多くの意図せざる結果とグローバル・イシューとしての脆弱性文化

1941年8月14日に米国のルーズベルト大統領と英国のチャーチル首相によって大西洋憲章が発表された。20世紀半ば以降の世界史の中心軸はその内容の実現をめぐる歴史であり、国際開発はその中核的役割を担ってきた。飢餓と恐怖からの自由、そして個々の国民が欲する政治システム(リベラル・デモクラシー)を選択する自由。これらを世界の目標として掲げ、第二次世界大戦(この時点では日本はまだ参戦前)とその後の冷戦を乗り越え、リベラルな国際秩序・自由民主主義体制・市場経済を一体とした世界を目指して現代史が展開してきた。


1990年頃にはこれらの目的が達成され、歴史の終わり、などという言説さえ広く使われるようになった(1)。しかし1940年代後半から徐々に展開されはじめ、1950年代から加速した新独立国への大西洋憲章のスピリットの適用を通じて、1960年代以後国際社会の中心的役割を担ってきた国際開発がもたらしたものは、一方でそのリベラルな国際秩序にチャレンジし、今後の覇権国家を目指すかに見える中国、他方に50ヶ国にも上る脆弱国家(2)を両極端とする、全体として民主制とは程遠い国家群である。国際開発の対象諸国は多かれ少なかれ脆弱性を抱え、難民と、いわゆるポピュリズム、さらには国際テロという伝染媒体を通じて先進国にも脆弱性は拡散しつつある。


グローバル化した脆弱性の震源地は国際開発の対象諸国であり、特にそのうちの半数近くが脆弱性の中核をなしている。これら諸国では社会のありようが脆弱性を中心とした生活の仕方を人間関係の中心に据え、脆弱性文化が社会を覆っている。社会に深刻な亀裂を抱え、日常生活に安全性が欠如し、政府の統治能力が極めて弱い(3)これら諸国の状況は国際開発によって悪化さえさせられてきた面が多分にある(4)。脆弱性文化を打破し、地球社会に新たな希望をもたらすのは、この課題を結果として作ってきてしまった我々国際開発のプロの21世紀社会に対する責任であろう。


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