SRID  Journal




SRIDジャーナルとは


「SRIDジャーナル」は、国際開発のあり方、進め方について、斬新で面白く、知的で革新的な考えとアイディアをブログのような形で、世界に向けて発信していこうとするものです。学術論文集を目指したものではなく、SRID会員と友人達のアイディアを広く提供することが一番大きな目的です。内容は論説、提言、書評、エッセイ、フォーラム、等々何でもありです。日本と世界の識者の間で共有していただければ望外の喜びです。この趣旨に共感される読者からの投稿も歓迎いたします。年に2回という限られた発行ではありますが、人々の心に共感と明日への希望を与えられるように、努力して行きたいと思います。


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途上国アルバム(川野亮:バングラデシュ)

ラマダン中の日没後の食事イフタール 誰も泳がないコックスバザール海岸 デポ内車庫で目前の開業を待つMRT車両

巻頭エッセイ

分断と絆:逆流する歴史と進展する歴史

髙橋一生

アレキサンドリア図書館顧問/元国際基督教大学教授


1.近代国際社会の基盤が崩れ始めた

地球温暖化や生物多様性の激減を始めとした地球環境の急激な劣化、コロナ・パンデミックとおそらくそれに続くであろう多様なパンデミックの時代の始まり、ウクライナ戦争が開けた国境神話のパンドラの箱、米中覇権闘争という新たなギリシャ神話の展開:どれも人類の生存そのものにかかわるメガ課題が同時並行的・複合的に進展し、脆弱な近代国際社会の基盤が崩れつつある。しかもこの複合危機は長期に渡り地球社会を揺るがすに違いない。


宗教、言語、身体的特徴、および歴史認識という4要素が穏やかに結びつき、一つのグループ・アイデンティティーを構成 することによって幻想共同体を形成するという国民国家 に関する共通認識があった。そのような国家を目指してほぼすべての地球上の国家群が努力してきたはずである。その努力の後塵を拝している諸国の努力に協力するのが我々開発協力のプロ集団の役割であり、その基盤の上により強固な国際秩序が築かれるはずである、と信じてきた。歴史上例のない強烈な、且つ長引く複合危機は、その近代国際社会の基盤を崩し始めているようであり、我々国際開発協力のプロ集団が前提にしてきた枠組みに関する徹底した再検討が喫緊の課題になってきたようである。


この複合危機は地球社会を多様に分断してしまった。ウクライナ戦争はグローバル・ノースのほぼ全面戦争であり、グローバル・サウスは大規模な被害者集団である。地球環境の劣化は、例えば地球温暖化に関するCOP27は、今までの交渉メカニズムとしての「緩和」と「適応」のみならず「損失と被害」というカテゴリーを作らざるを得ない状況になり、とりあえずこの新たな分野に取り組むための基金を今後作ることが2022年11月19日明け方に合意された。コロナ・パンデミックは、大規模なパンデミックに対してはWHOが機能不全を起こすことを白日の下にさらした。ワクチンのみならずマスクさえもがパワーポリテイックスの武器になってしまい、国際保健衛生分野の抜本的改革が国際社会の課題にならざるを得なくなった。


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