2017年度活動計画

 

(ア)  活動の抱負

<会長>

アメリカのトランプ政権が発足したものの、早くも混乱が始まってきたように見える。モスレムの人達の入国禁止や温暖化対策を見直す大統領令の署名にも反発が高まっている。同時に、予算書では国防や国土安全保障の予算が夫々9%増大し、国務省(29%)、環境保護庁(31%)等、多くの予算を徹底的に削減しようとしている。国務省予算が29%も削減されると、国際機関への拠出金も大幅に減額されることになると思われる。これが実施されると、国際機関はもろにその影響を受けるだろう。国際機関の中立的な立場がおびやかされる危険性もある。更には国際機関の役割が再度見直される契機になるかもしれない。

 

ヨーロッパでも英国に続き、他の国々で反EUの動きが活発化している。フランスの大統領選挙では、反EUとフランス第一主義を掲げる極右国民戦線のルペン党首がリードしていると報道されている。シリアやアフリカ等からの難民や東欧からの移民増大でEU全体が揺れており、世界的な膨大な数の難民問題は、平和構築や難民救済の予算を増大させ、そのあおりを受けて、開発協力の予算を減少させるであろう。

 

そうなると、難民救済や平和構築の国際機関の予算が増え、開発協力関係の国際機関の予算は減少せざるをえないだろう。すでにUNDPをはじめとする開発関係の国際機関職員の人員整理が進みつつあるようで、これから国際機関で働きたいと思っている若い人たちにとっては、良いニュースではない。一旦、国際機関に入ってもサバイバルが一層重要な課題になってこよう。

 

SRIDは昨年度からキャリア開発事業を開始したが、実績からもわかるように、若い人たちの中には将来の仕事として、国際開発協力分野を志向している人はまだまだ多い。しかしながら彼らの能力を強化して、国際競争力のある人材に育てるためには、相当のガイダンスや能力強化の研修が必要である。学問的知識は大学で身につけることが出来ても、実務において十分に活躍できるようになるためには、それ以上の実務能力や個性的な能力の研磨が必要である。

 

SRID会員は、国際開発協力の経験者として貴重な知識と経験を持っている。大来佐武郎先生が望まれていた、国際開発協力分野で活躍できる人材を養成するために、SRID会員が持っている知識と経験を活かしてもらい、大いに役立ちたいと思う。先日、元学生部の部長であった社会人から、「今日、自分があるのはSRIDのおかげである、と思っているので、東京に戻ってきたら、再度SRIDに入会したい」とのお言葉をいただいた。大変嬉しかった。今後、元SRID学生部の人達に、たくさん再入会していただきたいと思う。(藤村)

 

<代表幹事>

昨年に引き続き代表幹事を務めせていただく。2016年度は、新規事業として、キャリア開発事業(国際協力人材支援事業)を開始した。新規に6名の会員の参加、ホームページの改訂、ニューズレターの様式の改訂などが実現し、新たな活動の道筋が見えてきた年であった。他方、2016年は、国際的には、前年に開催された国連総会でのSDGsの設定やCOP21などで共有された開発援助の役割、環境問題への取り組みの方向性を具体化すべき年となることが予測され、期待された年であったが、イギリスのEU離脱や、アメリカのトランプ政権の誕生で、国際的協調に不透明な状況が現れた年となった。

今年度は、こうした複雑な国際状況の下で、国際開発を確実に進展させるための活動を支援していくことが、従来にもまして重要になると考える。このため、ホームページの改訂によりアクセスしやすくなったキャリア開発事業を通じた若い人との接点を大切にし、従来からの、懇談会、ニューズレター、シンポジウム、サロンを通じた会員間の交流・意見交換の場をより良いものとする。また、学生部の再建・あり方を検討するとともに、学生諸団体の自主的な活動を支援する国際協力人材支援事業の展開を図る。また、上半期に会員の自由な意見交換の場としてのシンポジウムを企画し、こうした活動を通じ、新たな会員の増加、会の活動の活性化に努める。(神田)

 

(イ)  活動方針

<総務>

  毎月1回幹事会を開催し、議事録を会員に配信する。

  8月に暑気払いを兼ねたイベント、1月に新年会を開催し、会員間の親睦を図る。

  懇談会などを通じて会員の勧誘に力を入れる。(山下)

 

<広報>

  定期的にHPを更新し、年に2回ジャーナルを発行する

  各種メディアによりSRID活動の全体的プロモーションを行う。

  SRIDのパンフレット・案内書の配布、幹事の名刺作成などを行う。(山岡)

 

<ニューズレター>

幹事会の協力を得て、年6回程度の発行を目指す。「自論公論」「旅の千夜一夜物語」、「イベントの案内・報告」などの他、会員相互の情報交換や近況報告を兼ねて、より多くの会員に投稿を呼びかける。(山下)

 

<懇談会・シンポジウム等>

以下のテーマについて懇談会・シンポジウム等を企画・開催する。

・複雑化する国際情勢をめぐる諸問題等を外交・安全保障・開発の観点から探る。

・グローバル化の行方・国際協力の役割を国連や二国間の援助機関の動向から探る。

・ その他、適宜会員の関心あるテーマ(神田)

 

<他団体との連携推進>

2017年度は全国国際協力学生団体連盟(UYIC)など学生団体との連携を通じて、学生部の再生を目指す。(湊)

 

SRIDジャーナル>

2016年度は藤村建夫委員長以下、浅沼信爾、高橋一生、福田幸正、湊直信、山岡和純の6名の委員が企画・編集を担当し、中島千秋会員が協力して、7月に第11号、1月に第12号を発行した。特集は編集委員会で決定するが、できるだけ国際開発の最前線のトピックを選びたい。2017年度は、反グローバリズムが世界中で芽生えている現状と、政府開発援助の役割が減少していることを念頭に、米国のUSAID予算を30%カット、国際機関への拠出金の減額、環境改善努力の後退といった政策変更が世界にどのようなインパクトをあたえるのか、といった課題も取りあげて行きたい。ターゲットグループとしては、国際開発を学習している大学院生や研究者・実務者とする。この関連で、大学院生のゼミやグループ活動を紹介することも考えたい。(藤村)

 

<サロン>

・三上サロン

主宰者である三上会員の都合を調整しながら、年23回を目途に開催する。SRIDメンバーの他、外部からのゲストスピーカーも歓迎する。(神田)

・サロン・エカポール

2017年度は、国際開発のフロンテイアで活躍されているプロフェッショナルを招き、開発問題のホットイシューを中心に、最前線の新鮮な話題を提供してもらうことにしている。ホストとゲストの都合で定期的に開催することは難しいが、年に23回開催する。また、他の関連するネットワークの若者とのサロンも検討する。(藤村)

 

(ウ)  キャリア開発事業の本格実施

2016年度にスタートし、パイロット実施された事業を継続し、拡大する。事業内容は、@SRIDキャリア開発塾、A学生の国際協力活動支援、B国際機関に勤務する若手日本人職員支援、の3本立てである。詳しくは別紙22017年度事業計画及び予算案」を参照されたい。(中沢)

 

(エ)  学生部の活動停止について

2016年度は三谷宏明氏が学生部代表となって新人の勧誘に努めたが、最終的に活動に参加するのは2名のみとなり、6月以降活動を停止した。20173月に三谷氏より正式に学生部活動停止の申し出を受けた。2017年度は関東周辺の学生を中心に学生部を再生することを目指したい。(藤村)

 

(オ)  2017年度予算案のポイント(山下)

   幹事、及び委員の軽食費

幹事会、ジャーナル編集委員会、キャリア開発事業運営委員会を開催する都度、出席者1人当たり700円程度の軽食費を補助する。

   外部協力者への謝金

 2014年度第10回幹事会(2015216日)で定めたSRID会計規約に基づき、会員以外の活動協力者に対して、講演謝金(3万円または2万円)、及び執筆謝金(3万円、2万円または1万円)を支払うこととする。

   懇談会、シンポジウム等

会員の勧誘を兼ねて、若者や女性にも魅力を感じてもらえるイベントにするため、会場費、講師謝金、懇親会費など合わせて30万円を計上する。

   旧学生部への活動支援金の停止、及び新学生部への設立支援金

これまで学生部への活動支援金として、10万円から前年度繰越金を引いた額を旧学生部に送金していたが、2016年度は活動を停止したため送金しなかった。2011年度以降の支援金の累計は147,496円であった。2017年度は新規の学生部支援として、5万円を計上して年度後半の設立を支援したい。

・  SRID netのホームページ更新費

2016年度はキャリア開発事業のページを新設するなど、10万円の予算を大幅に超えてホームページの更新を行ったため、2017年度は更新予算を計上しない。

   サロン活動への支援金

サロン主宰者、及び参加者の負担を軽減するために、飲食代、ゲスト交通費などの補填金として5万円を計上する。

・ 予備費

   拡大イベントの開催などを念頭に、予備費として5万円を計上する。

   次年度繰越金について

2016年度の剰余金残高124.7万円から、2017年度に想定される収支赤字29.1万円をとり崩すと、2017年度末の想定剰余金残高(次年度繰越金)は95.6万円に減少する見込み。